下記の記事の続編となります。
前回は組織の中にいるメリット、組織と自分の目的は異なるということ、したがって組織の中で「居心地の良い」場所を作ることが一つの解法だという内容を紹介。
そして組織を部分的にコントロールする方法として、CIAの前身が作成した「シンプル・サボタージュ」のことを書きました。
前回は、居心地の良い場所を作るためのツールの一つを紹介しました。
今回はその続きとして、居心地の良い場所を作るために私が重視しているスキルの紹介です。
<目次>
ナンバーワンは難しい
会社の中では気付け薬や激励の言葉として、ナンバーワンという表現が出てくることがあると思います。
業界ナンバーワンを目指す、ナンバーワンの人材、ナンバーワンの業績・・・などなど。
ですが平たく言って、ナンバーワンになることはまず不可能です。
桁外れの努力を正しく行い、そして幸運に恵まれれば、一時的にナンバーワンに近い状態にはなれるかもしれません。
しかし今度は、その立場を維持するという難しい戦いを迫られることになります。
極めて優秀な人たちであればともかく、私のような凡人には、それだけのコストを払ってナンバーワンになろうとするのはいかにも非効率に感じてしまいます。
もちろん、それが自分にとってやりたいことであればやれば良いでしょう。しかし個人の目的と組織の目的が往々にして異なる以上、組織の中でナンバーワンを目指すことはそれほど重要ではないと思うわけです。
(もちろん、個人と組織の目的を合致させナンバーワンを目指すという選択肢もあるでしょう。それは個人の自由です)
オンリーワンも難しい
それではナンバーワンではなく、オンリーワンならどうでしょう。
私見ですが、オンリーワンになる難易度は組織の規模に応じ、大きくなればなるほど上がっていくものだと思います。なぜならば、大きな組織には多様な人材が集まり、多様なスキルが揃うからです。
数百人、数千人の組織のオンリーワンともなれば、そこに至る難しさはナンバーワンと似たようなものでしょう。
結局のところ、才能ある一握りの人を除けば、多くの人は凡人です。
凡人が才能ある人に憧れるのは自然な気持ちで、良いところを吸収しようと努力するための燃料とするのも結構なことですが、「私もああなれる」という根拠無き自信や同一視は毒にしかなりません。
代替できない人材はいません
会社においてはある程度の能力を持っていても、代わりがいる労働力は安く使われてしまうものです。
しかし、だからと言って良く言われる「貴重な人材になれ」という言葉は、話半分、もしくは話一割で聞くべきだと思います。
なぜなら、ナンバーワンやオンリーワンは難しいから。
誰もがなれないから貴重なわけで、そこに自分が至れるという根拠無き自身は毒にしかならないと書いたばかりです。
もちろん、そのような場所を目指すのは個人の自由ですが、そこにたどり着けるのはほんのわずかな人間だけ。
リスクリターンを考えれば、そんな選択肢を選ぶのは非効率です。
ですから目指すべきは、「代わりがいない人材」ではなく、「代わりはいるけど見つけるのが大変」という人材だと思います。
会社側に、辞めたときの補充コストとそのまま雇い続けるコストを天秤にかけさせ、雇い続ける方を選ばせるわけです。
もちろんそのためには学習して能力や技術を磨くことも必要ですし、自分の業務の一部をブラックボックス化する戦術もアリでしょう。
上司にも詳細が分からない仕事を抱えることができれば、会社側の補充コストは上がります。
組織の視点では属人化は良いことではありませんが、前述の通り「組織の目的と個人の目的は異なる」ので、価値観が異なるのは当然のことであり、また組織と個人とで最適解が異なるのもあたりまえのことです。
スキルのかけ算
「代わりはいるけど見つけるのが大変」という人材になるためには、何をすればいいか。
私が実践したのは、スキルのかけ算です。
例えばコミュニケーション能力は仕事をする上で重要ですが、それは人間が皆多かれ少なかれ持っている基本機能にすぎません。
ですからコミュ力をウリにするのは、多くのライバルがひしめき合うレッドオーシャンでガチンコ勝負を挑むようなもの。
それは競争が激しい割には実入りの少ない、コストパフォーマンスならぬエフォートパフォーマンス(努力対効果)が低い戦略ではないか、と思うわけです。
目を付けるべきは人の基本性能ではなく、「少しだけ特別な技術や知識」です。
(基本性能は必要という前提です)
例えば、組織の中で10%しかできないスキル(それ自体は大したスキルでなくとも構いません)があったとします。
それを3つほど覚えれば、単純計算で「10%×10%×10%=0.1%」の能力持ちになれるでしょう。
そうやって能力を磨き組み合わせていけば、「見つけるのが大変」という人材に近づきます。
私も実践しました
見つけるのが大変な人間と認識されれば、組織はその人間を囲おうとします。結果として多少のワガママは通るようになり、組織の中で居心地の良い場所を得ることにつながります。
もっともこれは、組織の中に居続けてそのメリットを享受する前提での話。
場合によってはこんな面倒なことをしなくとも、転職や独立した方が早いという場合もあると思います。独立のアテがあったり、組織がブラックだったり理解がなかったりした場合は、そちらの方がいいでしょう。
そう考えると、この方法はどちらかと言えば大きな組織、大会社向きなのかもしれません。
時間はかかりましたが、私はこれを実践することで組織の中に居心地の良い場所を作りました。これは万人に通用する話ではないと思いますが、参考になれば幸いです。