今年政府は、希望する人が70歳まで働けるような仕組みの骨格を作りました。
合わせて、公的年金の繰り下げ受給も75歳までの拡大が検討中。
この話題に関して、私の視座からの感想や予想を記事にします。
<目次>
制度の変更
まず、現行法と今後変更が予想されるルールについては、日経に分かりやすい図が出ていましたので引用します。
(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44828520V10C19A5MM8000/ より引用)
65歳までは現在でも、定年の延長や廃止、再雇用を用いて希望者全員を雇用する義務が存在します。
これに加えて70歳までの雇用を努力義務とし、選択肢は上記に追加で「再就職支援」「フリーランス・NPO活動への資金提供」「起業支援」ができるようにする、というもの。
もっとも65歳から再就職やフリーランス、起業ができるような人はそもそも会社としても手放したくない人材でしょうから、実際は企業に70歳まで雇うことを要求する制度と言っていいと思います。
実際に65歳定年が導入された時もまずは努力義務、その後で義務化されましたから、70歳定年も近いうちに義務化という流れになるのは予定調和だと思われます。
企業への影響と対応策
70歳定年が導入された後のことを考えます。
真っ先に影響が出てくるのは、まちがいなく企業の総人件費。
60~70歳という、大多数はパフォーマンスの落ちていく従業員を雇用し続けなければならないのであれば、人件費は当然増えます。現在はそれほどではないにしても、バブル期の写真がこの年齢になれば、対象者はぐっと増えるでしょう。
今は企業に体力があったとしても、それがいつまでも続くとは限りません。となれば、企業はどんな手を打ってくるか。
総人件費の予算を増やすことが難しいなら、方法は大きく分けて二つでしょう。
①現役世代の昇給カーブを削って、65歳以上の人件費に充当する
②高年齢層を中心とした配置転換や肩たたき
そしておそらく、多くの企業でこの二つの方法は同時並行で行われると思われます。
高齢者の雇用促進が労働環境をより厳しくするというのは皮肉ですが、しかしこれも世の流れでしょう。
諦めろとは言いません。受け入れて対策することが必要なだけです。「acceptはするがgive upはしない」という態度です。
正しく、ずる賢く
このような制度の変化に、労働者としてはどう考えればいいのか。
まずは、「正しくずる賢くなること」が大事だと思います。
全てのルールは目的があって制定され、得になる人も損になる人もいます。自分が損になるルールができてしまった時には、そのルールは自分の方を向いていないと考えるべきです。
制定されたルールを個人の力でひっくり返すことはできませんし、逆らえば罰則があります。
ルールは従うものでも逆らうものでもなく、ただ利用するものです。
ルールをよく調べて、得になる方向へ動きましょう。それが「正しいずる賢さ」です。
ルールに穴があるとき、みんながそれを調べて有効に利用すれば、ルールを作る側は穴を塞ぐ必要に迫られます。結果としてルールは公平に近づきます。
この国は、外国のように社会生活に影響のあるレベルのストライキをできない国民性です。ならばルールを少しでも自分に近づける方法は、それを利用することです。
個人が考えるべきこと
今回の例で言えば、定年とは「働ける上限」であって「働かなければならない年齢」ではありません。
その前に雇われ労働を辞めるのは個人の自由ですし、そもそもフリーランスなら定年という概念自体がありません。
つまり、定年の上限が変更になったこと、それ自体に大きな意味はないと考えます。
年齢によらず自分のスキルを磨き、市場価値を高めておくことがより重要になっただけで、そんなものは実のところ昔から当たり前のことです。
国が全ての国民を平等に扱うことができない以上、価値を多く生み出したものが多くを受け取れるのは自然なことで、努力せずに結果は手に入らないという当然の事実がより明確になっただけです(セーフティネットの議論はまた別物)。
またすでに半ば瓦解していますが、専業主婦(夫)という存在も今後は過去の遺産になるでしょう。
何も雇われるだけが働くことではありません。このご時世、スキルとデバイスさえあればどこでも、いつまでも付加価値を生み出すことができる仕組みはすでに整っています。
「これまではそうじゃなかった」「世代が違うだけで不公平だ」という意見も当然あるでしょう。
それは私だってあります。
けれど、現実を否定しても何も生まれないし、何も始まりません。早く気付いて早く動いたものが有利になるのですから、早々に行動を始めたいところです。