SAMURAI FUNDから新しい案件が募集されます。
SAMURAIからSAMURAI FUNDに名称を変え、オープニングキャンペーンで好利率の案件を募集しましたが、次の案件は落ち着いた利率。
その代わり上場企業グループへの貸付で、かつ保証会社の保証がついています。
内容を紹介しますので、興味のある方はどうぞ。
<目次>
案件の概略
募集する案件の概略は以下の通りです。
・上場企業グループ事業支援ファンド1号
募集開始:3/12 12:00~
予定利率:4.5%
運用期間:12ヶ月
担保:無し、日本保証の保証付き
今回の貸付先は、「Jトラストアジア(JTA社)」。
SAMURAI FUNDと共通の親会社「Jトラスト」を持つ企業への貸付です。
最終的な資金用途は、同じくJトラストの子会社である「PT Bank J Trust Indonesia(BJI社)」、インドネシア銀行への貸し付けになります。
JTA社からBJI社への貸付は7年間ですが、さすがにその期間を融資型クラウドファンディングで募集するのは無理があります。
(限度はありますが、融資型は短期間が好まれやすい)
そのため、案件の運用期間は1年間。返済はJTA社が別に借り換える資金で充当するとのことです。
貸付スキームと、保証の仕組み
今回募集される案件の仕組みは、通常のSAMURAI FUNDのものと変わりありません。
SAMURAI証券が私募取り扱い、SAMURAI ASSET FINANCE(SAF社)が営業者となり、JTA社に貸付を行います。
JTA社への貸付には担保はありませんが、日本保証が債務保証を行います。
返済日から2ヶ月を経過しても返済がない場合や期限の利益を喪失した場合は、日本保証の債務保証が発動します。
なお通常のファンドでは、日本保証への債務保証にかかるコストは貸付利率の中に含まれていますが、今回は貸付先と保証会社が同じグループだからか、JTAが債務保証料を負担するとのことです。
BJI社の業績については少し注意
インドネシアの銀行であるBJI社について、案件の紹介では以下のように書かれています。
2019年12月期の経営指標ROEは2018年の日本の銀行平均5.5%を、1%強下回る水準、ROAは、2018年の日本の銀行平均0.3%と同水準、自己資本比率(普通株式等Tierl比率)は、2018年の日本の銀行平均約10.1%に対し、1%ポイントほど上回る水準となっています。
ただこれはあくまでも日本の銀行平均であり、インドネシアの銀行と比べていないことには少し注意でしょう。
インドネシアの銀行平均がどのくらいかなのか最新のデータはありませんが、2013年のデータであれば下記資料のP.121あたりに掲載されていました。
・インドネシアの商業銀行の変容(アジア経済研究所 調査研究報告書)
これによると、2013年時点でのインドネシア銀行のROAは2%程度、自己資本比率は13%程度。
BJI社の数値はそれほど優秀というわけではありません。
以下の記事でも、BJI社の足下状況についてはどちらかというとネガティブに書かれています。
ただ現在BJI社は再建途上とのことで、計画に対しての遅れはあるものの再生後にはグループ業績を牽引することが期待されます。
財務状況は赤字、ただし注記付き
JTA社の財務状況についても、内容が公開されています。
監査法人による監査有りの財務情報ですが、見ての通り直近は大赤字という状況です。
ただしこれには注記がついています。
大赤字は株式の減損損失と貸倒引当金の一括計上によるもので、純資産は120億円。
タイで民事訴訟を抱えていますが、これの賠償金を支払ってもいきなり業績がおかしくはならないでしょう。
2018年3月期及び2019年3月期は保有する株式の減損損失や保有する債権に対する貸倒引当金繰入額を一括計上したことに伴い、赤字が発生しておりますが、2019年3月期において、財務の健全性を示す指標の1つである純資産比率は97%以上であり約120億円の純資産を有しております。
不確定要素をどこまで許容できるか
今回の案件、仕組みとしては日本保証の債務保証が重要です。
そして日本保証の債務補償額は2,000億円程度ありますので、今回の1億円が加わっても誤差範囲内です。
そういう意味では問題のない案件と言うこともできますが、貸付先の赤字状況、最終資金需要先の事業再生の遅れなど不確定要素があるのもまた事実。
その不確定要素をどこまで許容できるかは、投資家によって変わります。その許容の程度が、本案件に投資するかどうかの判断基準になるのではないでしょうか。