SBIソーシャルレンディングで起きた問題点は、この記事を書いている時点ではまだどうなるか分かりません。
個人的にはどちらかと言えば楽観視していますが、予断を許さない状況であることは間違いないと思っています。
<目次>
火消しの動き
不確実な状況は投資家が嫌うものであり、疑心暗鬼が広まれば投資熱も冷めてしまいかねません。
クラウドファンディングは個別株などとは事情が異なり、同じようなスキームで募集をかけている事業者が多いため、一つに問題が起きれば「まさか他も」と懸念が広がるのも、ある意味無理はありません。
一方では火消しの動きも当然起きるわけで、今回はそういった話題です。
まず同じ融資型であるクラウドバンクからは、SBIソーシャルレンディングで問題となった事業者がファンドに関係していた? とのことで、問題がない旨の発表がなされています。
・対象の会社に関するファンドは全て償還済
・対象の会社が連帯保証人となる事業を裏付けにするものはあるが、この事業と対象の会社の権利関係は切り離されている
・特別目的会社に役員が入り込み、監視体制にある
という内容で、良いタイミングでの発表だったと思います。
少なくとも現状、私はクラウドバンクのファンドに対して大きな懸念を抱いてはいません。
CREALが公開した記事
一方で不動産投資型クラウドファンディングでも、この問題を受けてと思われる動きがありました。
CREAL(クリアル)の公式ブログで、「不動産投資クラウドファンディングとソーシャルレンディングの違いについて解説」という記事がアップされています。
記事の中では、不動産投資型クラウドファンディング・融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)の代表的なスキームを挙げて、その違いを説明しています。
内容について紹介します。
融資型・不動産投資型の仕組みの違い
(CREALの一般的な不動産投資型ファンド)
(一般的な融資型クラウドファンディング)
クラウドファンディングは「ネットを介して不特定多数から資金を集める仕組み」であり、それを融資に用いれば融資型クラウドファンディング、不動産購入に用いれば不動産投資型クラウドファンディングとなります。
融資型は資金需要者に貸付を行い、多くの場合では担保を設定します。情報開示は行われる場合もあり、貸付先との協議では行われないこともあります。
担保物件には抵当権があるとは言え、現金に換価するためには時間を要し、担保物件のコントロールは間接的です。
これに対して不動産投資型では、事業者が不動産を購入しているためコントロールは直接的であり、情報開示も行われています。
案件の透明性と直接的なコントロールという意味では、不動産投資型≧融資型、であることは間違いありません。
CREALの実績と、融資型への提言(願望)
記事内で紹介されている、「直接的なコントロールが功を奏した例」というのは、ホテルファンドの「Q Stay and lounge上野」です。
新型コロナの拡大でホテル需要が落ち込む中、CREALは対象不動産のフルコントロールを利用して「ホテル→オフィス」の業態変換を行い、結果として、ホテルファンドは無事償還されています。
こういった例は、厳しい状況下でも不動産投資型クラウドファンディングが外部環境に左右されにくい、言わばロバスト性を備えている好例と言って良いのではないでしょうか。
不動産投資型の大きな特長の一つは、優先劣後出資もしくはセイムボート出資により、事業者と投資家の利害が一致しているという点だと思います。
この点はこれまでも重視されましたが、今後いっそう重要なファクターになると予想します。
さすがに融資型で優先劣後は難しいでしょうが、例えば上場企業等へのリコースローン、事業者とのセイムボート出資、第三者の保証会社による債権買取保証等により、いかに案件のロバスト性(外部の影響に左右されにくい性質)を高めていくかが、融資型クラウドファンディングが堅実なインカムゲイン投資となる上で必要なことなのではないかと考えています。