先日ANDART・ZUU共催のセミナーに登壇し、アート投資について色々聞いたり話したりしてきました。
今回はそれを受けての記事となります。なお、セミナーの内容についての事前告知記事はこちらです。
<目次>
アート投資の世界情勢
7/23にANDART社・ZUU社共催の「アート投資」に関するセミナーに、オルタナティブ投資(*)を好む投資家という立場で私が登壇させていただきました。
*株、債券、不動産など従来からある投資対象に対して、新たな投資対象への投資全般を指す言葉。
私がメインで行っているクラウドファンディングもオルタナティブ投資の一種であり、そのつながりでアート投資のセミナーにお声がけいただいた、というわけです。
さてそのアート投資ですが、世界全体での規模は2021年現在で8.8兆円相当、一方で日本でのアート投資の規模はわずか2%強の1,800億円余りと大きく遅れています。
(1,800億円というと、2021年の日本におけるクラウドファンディングの予想規模と同じくらいです)
世界でここまでアート投資が広まった理由は、富裕層などが投資対象としたことに加え、バンクシーなどを代表格とする新たなアーティストが広く知られるようになったり、ネットオークションが一般的になったことが大きいです。
実際、世界の超富裕層(保有資産3,000万USD以上)は投資ポートフォリオにアート(収集品)投資を5%程度組み込んでいるというデータ(*)もあり、アート投資は決して一過性のものでもなければ、あやふやなものでもないことが分かります。
*出典:http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2021/2021win14.pdf
アート投資の特徴二つ
アート投資には、二つの特徴があります。
一つはアート投資(特に現代アート投資)の市場拡大、富裕層を初めとした資産流入が起きやすいことなどを背景にして、特に長期投資においてアート投資は優れた投資方法となり得ること。
あくまでもバックデータですが、1995年から2021年までの現代アートの価格上昇率は、同時期のS&P500を上回るというデータがあります。
(引用元:https://www.masterworks.io/)
もう一つの特長は、アート投資は他の資産クラスとの相関が低いもしくはマイナスであること。
つまり他の資産に加えてアート投資をポートフォリオに組み込むことにより、分散効果が期待できることになります。
(引用元:http://www.nicmr.com/nicmr/report/repo/2021/2021win14.pdf)
ANDARTの「小口アート投資」の仕組み
ANDARTの小口アートの仕組みを、私の認識している限りで説明します。
・有望と思われる作品をオークション、あるいはディーラー経由や直接などの方法で購入
・美術品専用の保管倉庫で劣化しないように保管し、小口ファンド化
・ANDARTサービス内で小口化された権利を購入、あるいはユーザ内部で売買
・小口権利者多数の総意、もしくは値上がったタイミングで売却してEXIT
個人的にはEXITの仕組みが面白い、と感じています。
ANDART社サービスの中でプライマリ取引(ANDARTから小口化されたアートを購入すること)、セカンダリ取引(投資家同士が小口化されたアートを売買すること)があるのは自然ですが、失礼な言い方をしてしまえばそれは内輪での取引に過ぎません。
株式市場のように規模が十分に大きければセカンダリ取引だけでも成立するでしょうが、日本における小口アート投資市場が盛り上がるためには、投資家に大きなリターンをもたらすEXITが必須であると考えます。
(これはアート投資のみにとどまることではなく、例えば株式投資型クラウドファンディングでも同じことです)
価格をどう読み解くべきか?
例えば株式投資であれば、PERやPBRなどといった伝統的な指標があり、これらを参考にして価格を読み解こうとすることが可能です。
ではアート投資における価格をどう読み解くべきか、以下はあくまでも私の考えとなりますが、一つ紹介します。
ポイントは、以下の3点だと思います。
・「公開時の総額」(以下、公開価格)
・「オークション落札価格とその推移」(以下、オークション価格)
・「(実績あれば)サービス内の成立価格とその推移」(以下、サービス内価格)
投資したアートのEXIT局面における価格は、オークション価格に近くなるはず。
そしてアート投資における1口1万円の額面価格がどこに収束するかと言えば、理論上は「オークション価格÷公開価格×10,000」になるはずです(ただしオークション価格は可変であることに注意)。
これらから考えると、
・「オークション価格が安定的に右肩上がり(今後の値上がりが期待できる)」
・「オークション価格が公開価格を大きく超えていない(同上)」
・「サービス内価格が、上記の理論価格を大きく超えていない(サービス内で高値感がない)」
を満たす作品が面白そうと考え、セミナー内では奈良美智さんの「Backwards Forwards」を挙げさせていただきました。
(ANDART公式より引用)
最後に、アートと投資について
今回はオルタナティブ投資つながりで、ANDART社・ZUU社共催の「アート投資」に関するセミナーに登壇させていただきました。
なかなか美術館には行かない身ですが、投資という側面から見ればアートは面白いと思いますし、実際に投資してみることもかなり前向きに検討しています。
アートに限らず芸術を金儲けの手段にするな、という一部の意見があることは知ってます。分からなくもないのですが、はるか昔から芸術とパトロンは切っても切り離せないもの。
芸術だけではなくスポーツも芸能も同じく、お金の問題を抜きにして考えることはできません。
芸術を楽しむ視点と、投資商品として見る視点とは独立のものとして、お互い干渉せず共存できるものだと思っています。
それに例え金儲けを目的にしたとしても、結果として現代アート市場が賑わい現代アートという世界が広まるのなら、それは正しかったことになるでしょう。
清濁どころか、清濁々々くらいの割合で併せ呑むのが投資家というものです。たぶん。