一般には投資におけるリターンとリスク(リターンの振れ幅)は比例すると言われますが、それは「ある要因」を無視した場合の話にすぎません。
今回はそんな話題です。
<目次>
一般論としてのリターンとリスク
投資においての一般論として、リターン(利益)とリスク(リターンの振れ幅)は比例すると言われています。
高リターンで低リスク、あるいは低リターンで高リスクの案件は、ごく短期的にはともかく長期的には存在できません。その理由は簡単です。
・高リターンで低リスクの案件 → 多くの投資が集まるので、もっとリターンを下げても資金は集まる。
→リターンは下がり、低リターン低リスクの案件になる。
・低リターンで高リスクの案件 → 誰も投資しないので、もっとリターンを上げないと資金が集まらない
→リターンは上がり、高リターン高リスクの案件になる。
これは投資の基本的な内容です。もしくは、市場原理における需給の関係でもあります。
そしてこの原則を応用して、リターンとリスクが歪になっている案件をうまく見つけるのは投資の面白さの一つ。
または、この原則が当てはまらない投資を見付けるというのも面白さのうち。今回はこちらの話題になります。
リターンとリスクが釣り合う理由
市場原理における需要と供給は、無条件でバランスが取れるわけではありません。
バランスが取れるためには自由競争が成立している必要があり、寡占状況であったりカルテルが組まれていたり、あるいは多少高くなっても購入せざるを得ない財やサービスである場合などは、需要と供給のバランスは崩れます。
そして現実の社会では、自由競争が成立しないケースが往々にしてあります。
同様に、投資の世界においてもリターンとリスクのバランスは無条件で取れるわけではありません。
短期間であれば歪みが発生するのは先に書いた通りですが、実は長期的にもリターンとリスクのバランスが取れていない(リターンがリスクを上回る)案件があります。
そのような案件を理解するためには、まず「リターンとリスクは原則として釣り合う理由」を理解する必要があると思います。
これはメリットを考えれば簡単で、
・リスクよりリターンが高い案件 → 営業者にメリットがない
・リスクよりリターンが低い案件 → 投資家にメリットがない
という、とても単純な理由です。
そして、釣り合わない理由
ということは逆説的に言うと、営業者や投資家に「リターン以外のメリット」があるのなら、こういう案件も存在しうることになります。
投資家側の話をすれば、応援型のクラウドファンディングはその最たるものでしょう。
リターンがなくとも特典に魅力を感じたり、あるいは精神的な満足のために出資することは十分考えられます。
もしそういったことがなければ、法隆寺のクラウドファンディングで1億円以上が集まったりはしません。
では一方、営業者側では投資の資金を集めて収益を上げる以外に、どんなメリットが考えられるのか。
結論を言えば多くの投資型クラウドファンディングでは、「出資者を集める」という事そのものがメリットになります。
なぜ出資者を集めることがメリットになるのか。それはクラウドファンディングという仕組みの汎用性にあります。
クラウドファンディングは「器」であり、出資者と資金が集まるのならその上にどんな案件を乗せるか自由度が高い仕組み。なのでより多い出資者&資金を集めれば、それはビジネスチャンスに直結するからです。
リターンがリスクを上回る案件
例えば不動産投資型クラウドファンディングの営業者は、クラウドファンディングだけを行っているわけではなく、ほとんどの場合は本業として不動産事業を営んでいます。
不動産事業では顧客(大家さん)を探す営業活動をする必要があり、一部の営業者においては、クラウドファンディングが潜在的な顧客にアプローチするためのドアノックツールとして利用されています。
ドアノックツールとして利用するからには案件を失敗させることはできず、しかも多くの出資者に集まって欲しいから募集条件を良くする。結果として、リスクとリターンは比例せずリターン側に振れることになります。
また、大手企業が新たなビジネスの種まきとしてクラウドファンディングを利用するケースもあります。
代表的な例が、アイフルグループの運営するAGクラウドファンディングや、大和証券グループ、クレディセゾングループの企業が運営するFunvest(ファンベスト)など。
こういうケースでは、クラウドファンディング事業において黒字を出す必要がありませんが、失敗できないのは先ほどと同じこと。
つまりこの場合でも、リスクとリターンは比例せずリターン側に振れることになります。
こういったある意味の歪みをうまく利用するのも、投資家の腕の見せ所であり投資の楽しみだと思います。