2024年6月の話ですが、厚生労働省から一つのニュースがありました。
保険料の算定に金融所得を反映するようにする見直しから、NISAを除外するという内容です。今回はこの話題に関し、所感を含め雑記を書いていきます。
<目次>
金融所得の反映見直し
問題になっているのは、国民健康保険などでは配当等を確定申告すると課税所得が増えて保険料が増加する一方、源泉徴収のみで完了するなど未申告であれば保険料が増えないのは不公平ではないか? という議論。
2028年度までに金融所得を反映する見直しを行うかどうか検討を進めるとのことですが、まあだいたい悪い方に取った方が良いでしょうねこういう場合。
そもそも高齢者の相対的な増加によって保険料が増している現状では、その分の資金をどこからか徴収するか、あるいは高齢者への医療を抑制するかの二択しかありません。
私としては延命治療は(自分や自分の親も当然含め)保険適用外で一切構わないと思っているのですが、この国ではまだまだ人権や弱者への配慮ができる余力がギリギリ残ってしまっているので、なかなか難しいところです。
もっとも私のような氷河期世代が後期高齢者になる頃には、その余力もなくなると予想しています。そのことに文句はありません。動けなくなり食べられなくなり為すべきことを為せなくなれば消えるというのは、本来生き物としてのあるべき姿でしょう。
「災難にあう時節には、災難にてあうがよく候。死ぬる時節には、死ぬがよく候。是はこれ、災難をのがるる妙法にて候」というものです。
高配当か、無配当か?
先のニュースでNISAが保険料算定から除外されたということですが、逆に考えればNISA以外の金融所得は保険料算定に加わる可能性が高いということ。
これは何も配当だけが対象になるわけではなく、配当所得も譲渡所得もまとめて網がかかると予想します。なぜなら配当だけを対象にした場合、今度は「投資商品の性質による不公平」が発生するからです。
公平性の確保を理由にして税制や保険が見直される場合、多くの場合で相対的に有利な仕組みが希釈される方法で行われます。令和5年分から、住民税と所得税で異なる課税方式の選択が廃止されたのもそのひとつ。
今から何年後になるかは分かりませんが、おそらく株式などの配当が保険料算定の対象になるのと同様、株式や投資信託(ETF)の売却による利益も保険料算定の対象になるのではないかと予想します。
加えて金融所得に対する税率自体も、当分は据え置きだとしても長期的には上昇トレンドにあることから考えると、無配当型投資のメリットの一つである「課税の繰り延べ」は将来的に微妙になってくる可能性もあります。
今でこそ高配当に比べ無配当型は税制上有利と言われていますが、これはあくまでも現時点での話。
もし課税の繰り延べが反転した場合どうするのか、今のうちから考えておくべきでしょう。これは別に脅しでもなんでもなく、これまでも有利な方を希釈する形で制度が変わっていったことを考慮すれば、当然たどり着く推論です。
ほったらかしていいものはない
ちょっと自分の投資についても触れておきますが、クラウドファンディング投資は税制がどう変わろうがほとんど影響はないと判断しています。
クラファン投資は税制の中では不利な雑所得であり、先に書いた通り制度の見直しは相対的に有利な仕組みが希釈される方法で行われることが多いので、そもそも不利な制度のクラウドファンディングは変わりようがないからです(自虐)。
もしかしたらクラファン投資が雑所得ではなくなる将来もあるかもしれませんが、少なくとも近い将来ではないと考えますし、雑所得でなくなったならそれはそれで打ち手があろうというもの。
考えられるだけのケースを想定して対策を検討していくのは、投資の世界だけではなく一般の会社仕事でも同じです。
異論や反論は当然あるかと思いますが、私は「ほったらかし投資」という言葉は不適切と考えています。
投資手法はほったらかしで構わないにしても、ここまで書いてきたような各種税制や保険の仕組みを知ることは重要ですし、制度が変わった時にどのような手を打つかの検討も欠かせません。あるいは自分自身のライフステージや取り巻く状況が変わったらどう対応するかも、頭の中ではシミュレーションをしなければならないでしょう。
そういった様々な調査や検討に言及せず、**を積み立てておけば安泰だというのは悪しき単純化です。
ほったらかしていいのは温泉だけです。いつか行ってみたい。
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なべてこの世は不確実
今回は金融所得の反映からNISAを除外するというニュースから、当然考えられることをいくつか言葉にしてみました。
最後に一つ。
ここまで読んで、「なら結局、何が正解か書かなかったら意味ないじゃないか」と思ってしまう方がいたら、要注意です。
なぜかって? 正解なんて初めから存在しないからです。
投資に限らず生きていくことは多かれ少なかれ不確実性があり、ある意味でギャンブルの側面を持つと言えます。
ギャンブルという言葉には悪いイメージがつきまといますが、それは成功率の極めて低い勝負に出る場合、あるいは不確実性の結果が生活に不可逆的な(もしくは致命的な)影響を与える場合に限ります。
仕事でちょっとミスをする、生活でちょっとケガをする、投資でちょっと損を出す、そんなリカバーできる程度は日常茶飯事にすぎませんし、投資だけを特別視する理由もありません。
正解を求めるあまり、悪しき単純化や見た目の分かりやすさに飛びついてしまうのは、「攻略本症候群(*)」の症状の一つです。くれぐれもご用心を。
*多様な情報が手に入る現代、何につけても最適な攻略法があると妄想することから発する様々な悪影響。主な悪影響は何かor誰かへの盲信、思考の硬直化及び先鋭化、攻撃性の亢進、詐欺被害に遭う可能性の増大、投資における損失確率の増大など(SALLOW命名)。