今回の記事は、クラウドファンディング投資全体に関する内容です。
現在のクラウドファンディングを一言で表現するなら、それは「音楽が鳴り続けている状態」と言えるでしょう。この状況について思うところを記事にしてみます。
<目次>
音楽と「より馬鹿理論」
「音楽が鳴っている間は、踊り続けなければならない。」
少し昔のことになりますが、この言葉はサブプライムローンのリスクが高まっている2007年頃、シティグループのCEOがFINANCIAL TIMESのインタビューで口にした言葉。
そしてこの後すぐサブプライムローンのリスクは顕在化し、リーマンショックが発生して金融は大混乱に陥りました。私も1/3ほど資金を消し飛ばしました。
もともとの言葉は住宅ローンなどの債権について言及したものですが、この話は株式市場を始めとした、値動きがある投資商品についても当てはまると思います。
音楽が鳴っている間は熱狂が起こり投資商品に資金が流入する。その結果、本来の価値より大幅に高い価格で購入したとしてもそれ以上に高く売れれば問題ない・・・という、ウォール街のランダム・ウォーカーで言うところの「より馬鹿理論」に繋がるわけです。
(あるいは現代においては、「本来の価値」という定義そのものが揺らいできているのかもしれません)
今回の記事は、この二つ・・・音楽の例えと「より馬鹿理論」が導入部となります。
現在のクラウドファンディング投資と懸念点
ひるがえって、現在のクラウドファンディング投資について。
私の見る限り、クラウドファンディング投資の現況は「音楽が鳴り続けている」状態です。
2020年前後に起きた問題で一時期融資型の市場規模は縮小したものの、その後は徐々に盛り返していること。また近年においては不動産投資型が急成長を見せており、これが市場全体を引っ張っていることが大きな理由です。
正確な資料は手元にありませんが、投資型クラウドファンディングの2024年市場規模は2000億円後半になるものと推測します。
(参考資料)
www.yano.co.jp
特に近年成長が著しい不動産投資型ですが、一方で懸念もあります。
不動産投資型における最大の懸念は、これまで大きなミス(=償還遅延、損失)を経験していないという点です。出資すれば必ず儲かるというのは投資家にとってはウェルカムでしょうが、客観的に見れば異常でしかありません。
2019年の不特法改正により不動産投資型クラファンが活発になって5年、不動産投資型においては「ミスなく償還すること」がゼロベースの考え方となってしまいました。それは利率至上主義に、そしてミスが起きた時の揺り戻しを増幅することに繋がります。
今鳴り続けている音楽が止まる時があるとすれば、程度がそこそこ大きいミス(=償還遅延、損失)が発生した場合。
ただしクラウドファンディングは通常の投資とは異なるので、音楽が鳴り止んだ時の影響もまた他の投資とは異なるのではないかと考えます。
音楽が止まる時
クラファン投資で「音楽が止まった」際になにが起こるかということを考える場合、クラファン投資と他の投資の相違点として重要なポイントは3点あると考えます。
一つめ、見た目上の値動きが存在しないこと。
二つめ、買い方売り方が存在せず投資参加者全員のリターンが一致すること。
三つめ、多くの投資と異なりクラファンはプライマリ取引であること。
株などの投資は大部分が投資家同士が取り引きを行うセカンダリ取引であり、値動きがあり買い方・売り方がある投資ですから、リスクが顕在化した時に損切りを行うことが可能です。
それゆえ流動性が確保されるという一面がありますが、他方で投資家同士の思惑により取引価格が決まってくるため、記事の最初で書いた「音楽が鳴り続ける」状況が発生したり「より馬鹿理論」が成立してしまう側面もあります。
一方で多くのクラウドファンディング投資は、営業者と投資家が取り引きを行うプライマリ取引ですから、投資家の思惑が与える影響はセカンダリに比べ薄れる代わり、ファンドを組成する営業者側の思惑が影響します。
もし運用が大コケした場合はその事業者の信用そのものが大きく毀損することになる一方、クラウドファンディングが活発になれば、その恩恵は投資家だけではなく各事業者も享受することができる、つまり事業者と投資家の利害はある程度一致しているわけです。
このように考えると、クラウドファンディングにおける「音楽が鳴り続ける」状況は投資家側の思惑だけではなく、事業者側も望んで音楽を継続していきたい思惑が働くと言えそうです。
さらに「見ため上の値動きがない」「投資家参加者全員のリターンが一致する」という特徴を考えると、結果としてクラファンで音楽が鳴り止んだ場合の影響は株などとは異なり、よりソフトランディングになると予想します。
(と言いつつ、実際に問題が起きたら一時的な騒ぎにはなるでしょうが)
私が現在「音楽が鳴っているから、踊り続けている」のは、こういった推測と予想によるものです。なお言うまでもありませんが、個別ファンドで元本が毀損する可能性が無いor低いという話ではありませんのでご注意を。
まとめ
今回はクラウドファンディング投資の音楽が鳴り続けている現状の紹介、そして音楽が鳴り止んだ時の影響を記事にしました。
最後にまとめとして、私がクラウドファンディング投資を行う上で重要視していることを紹介します。
手法として重要視するのは分散投資ですが、マインドとして重要視するのは「楽しむこと」です。
「良い投資はつまらないもの」という言葉もありますが、つまらない投資を延々と続けられる人間ばかりではありません。そして投資は万人のものですから、つまらない投資はイヤという人がいたとしてもそれは個性のうちです。
クラウドファンディング投資などという、通常の投資とは性質も税制も異なる煩雑な投資に手を出しているということは、面白くない投資は続かないと心のどこかで思っているからでしょう。であればやるべきことは粗探しをしたり文句を言ったりすることではなく、次はどんなファンドや出来事が起こるのだろうとワクワクしながら楽しむことです。
そしてできれば、損失も楽しめると強がりを(ここ重要)言えるくらいのマインドであるべきです。
こういうマインドは万人向けではないかもしれませんが、クラウドファンディング投資を黎明期から始めて10年以上、FIRE後数年間同じ投資スタイルでやっているのですから、私にとっては適切なマインドだったことは間違いありません。