実質年利18%という高利率で話題となった、K-FUNDの1号ファンド。
今回はこのファンドを例に挙げて、クラウドファンディングにおける「トランシェ」について私見を述べる記事です。

<目次>
K-FUND 1号ファンド
K-FUNDの1号ファンドは、10/14の19時まで抽選式で募集されています。
・マンション用地開発ファンド (K-FUND1号)
募集開始:10/7 12:00~10/14 19:00(抽選式・後入金)
予定年利:12%+Amazonギフト3%
運用期間:6ヶ月
募集金額:1億円
保全など:優先劣後方式 優先出資33.6%・劣後出資9.4%・借入57%

特典込みの実質利率18%という好条件で話題になったこのファンドですが、もう一つ別の話題もあります。最近では高利率ファンドが珍しくないので、本ファンドの特徴は別の話題の方に詰まっていると言えるかもしれません。
本ファンドは優先劣後方式を採用し、ファンド全体のうち57%を借入により資金調達しています。
通常であれば借入は金融機関(銀行や信用金庫)から行われるところ、K-FUND1号においては借入を融資型クラウドファンディングから行っています。
そのため本ファンドは、融資型と不特法型のトランシェ構造をしていると表現できます。
K-FUND1号、トランシェに分けられてると考えればわかりやすい。
— SALLOW@クラウドファンディング投資/FIRE済 (@SALLOW_SL) 2025年10月8日
✅K-FUNDで投資した場合
→年利18%相当・LTV91%で優先劣後以外の保証なし
✅某AG社で投資した場合
→年利6%・LTV57%で対象不動産担保あり
どっちを選ぶかは投資家次第ということです👍https://t.co/jJpPHk6kn3
トランシェの例
トランシェというのは、一般的には「原資産を切り分け、それぞれをまとめた部分」の呼び名。トランシェの例は、不動産の証券化や企業の調達資金などに見ることができます。

例えば不動産(信託受益権)を証券化する場合、その中身は資本金や借入金、あるいは匿名組合の出資金などで構成され、それぞれリスクやリターンが異なります。これら一つ一つの部分がトランシェと呼ばれます。

あるいは企業が融資型クラウドファンディングを併用して資金を調達する場合、調達した資金の中身には自己資本、金融機関からの借入、融資型クラウドファンディングによる資金調達などが含まれます。これらの部分もリスク・リターンや性質が異なり、トランシェ分けされています。
クラウドファンディングとトランシェ
クラウドファンディングにおける投資可能なトランシェの実例は、融資型では以前から存在していました。
不動産を担保にしてローンファンドを組成する際、一部の事業者では同一担保を対象に弁済順位や利回りが異なる複数のファンドを組成する場合があります。
例えばLENDEXにおいては、以下のようなファンドが募集されたことがあります。

一方で私の知る限り、不動産投資型クラウドファンディングにおけるトランシェの例はこれまでありません。(金融機関からの借入もトランシェに当たりますが、ここでは投資家が参加できるかどうかを話題にしています)
今回のファンドは不動産投資型と融資型を跨いだトランシェという(おそらく)初のケース。
こういった商品に個人が投資できるようになったのは現代ならではで、選択肢が増えたことは純粋に喜ぶべきことなのですが、一方で内容については注意深く見ていく必要があります。
本質はハイリスク・ハイリターン
K-FUND1号は特徴ある仕組みと高利率で人気を博している一方、融資型クラファンを併用した不動産投資型ファンドの本質はハイリスク・ハイリターンだということは、投資にあたって十分に理解すべきでしょう。
銀行等の金融機関では借入の際に一定の基準で審査されますが、融資型クラウドファンディングではサービスごとに審査基準が大きくブレます。金融機関からの借入が行われた事実は対象不動産の価値を一定程度担保しますが、融資型クラファンからの借入は話が違います。
一般的な金融機関の融資審査の場合、対象不動産の価値と同時に借入先の財務状況や健全性も評価し貸付を決定します。融資型クラファンでもある程度借入先を審査はするでしょうが、それよりも対象不動産の比率が重い傾向にあります。つまり「貸付先がおかしくなっても担保で回収できればいいや」という考え方です。
そしてこのような考え方ですから、万が一の場合融資型クラウドファンディングの事業者は即座に担保回収に入ります。このため融資型へ出資した投資家と不動産投資型に出資した投資家の間で、利益相反が起こりえる構造になっています。
表現は的確ではありませんが、不動産投資型においてベース部分の借入を融資型クラファンから行うことは、信用二階建てのような割り増しリスクを背負うことになるという点は認識しておくべきです。
まとめ
融資型クラファン併用型ファンドに関して私は、話題作りの初回ファンドや記念ファンド等で限定的に用いるのであればともかく、常用するスキームではないという考えです。
ファンドが順調に運用されている間は、事業者・投資家ともにWin-Winの関係が保たれるでしょう。しかし万が一のことがあればその関係はたやすく瓦解するどころか大いに燃え広がり、後には悪評判と黒歴史しか残らないという事になりかねないからです。
ただしこれは、K-FUND1号に投資すべきでないという意味ではありません。
個人が分散を武器に、こういったクセの強いファンド「にも」投資できるのがクラウドファンディングの妙味です。自分の資産量を把握して、自己責任のもとで十分な分散を行い高リターンを狙っていくのは投資戦略として大アリでしょう。実際私も部分当選を見越して、100万円で投資申込を行っています。



