世の中には数多くの投資商品があり、クラウドファンディングはそのほんの一部、それもまだマイナーな投資でしかありません。
今回はそのクラファン投資と、メジャーな投資商品である米ドルMMFの話題です。
<目次>
話のきっかけ
今回の記事を書くきっかけとなったのは、三井住友銀行がドル定期預金の利率を上げたという2023/9/19付けの記事です。
>三井住友銀行は25日から米ドル建て定期預金の金利を現在の年0.01%から5.3%に引き上げる。引き上げは5年ぶりで、5%台のインターネット銀行と同等の水準にする。
ところで、これまでの利率がどうだったかというと。
(9月18日時点の三井住友銀行の外貨建て定期預金金利)
うん、これはなかなか。
足下の米国金利水準で0.01%というのはどうなんだ&誰が利用しているんだこれと思わざるを得ません。
実際には色々銀行との付き合いがある人もいるでしょうし、金利を調べない投資家サイドにも問題があるのは確かなのですが、三井住友銀行を始め多くの金融機関が採用している受託者責任(フィデューシャリー・デューティー)的にどうなんだとも考えてしまいます。
もっとも、受託者責任の側面から適切ではないと判断されたからこその利上げという可能性もあり、時期的な問題はさておき利上げは判断としては間違っていません(FD以前に、流石に金利差ありすぎて資金逃げるやろという判断が下ったのは想像に難くありませんが)。
なのでこのニュースについて私の受け止めは「ふーん」という受け止めですが、他の大手金融機関が追随するかどうかには興味があります。
米ドルMMFの金利
外貨建ての「とりあえずの資金の置き場」として有用なのがMMFで、私も昔は良く使っていました。
米国金利の値上がりを受け、今のMMF金利は以下の通り5%近い値となっています。
(2023年9月11日時点の楽天証券における米ドルMMF金利)
クラウドファンディング投資の利率は案件により幅広いですが、5%の利率は中央値に近く、米ドルMMFの利率はクラウドファンディングと同レベルの水準とも言えます。
さらに流動性があまり良くないクラウドファンディングと比べ、MMFは約定日の翌営業日が受渡日となり、受渡日からは自由に売却できる流動性が特徴です。
この二つの投資は性質が異なるのですが、それでも比べてみたらどのように考えるべきなのか、次に私の考えを書いていきます。
外貨建てMMFとクラウドファンディング
*ここからの考えについては私のバイアスが混じりますので、その点はご承知おきください。
外貨建てMMFとクラウドファンディングを並べてみた時、もっとも大きな違いは外貨か円貨かというものです。
この一点だけで二つの金融商品は単純な比較対象にならない、と言っても過言ではないでしょう。利率が同じだと言ってもそれは数字上のことで、利率を基準として比較するなら相手は米ドルMMFではなく円MMF、あるいは円建ての債券でなければいけません。
そして利率4~5%程度の円MMFや円建て債券がほぼ存在しない以上、比較対象として適切でないことは明白です。
つまりクラウドファンディングに投資し円建てで4~5%の利率を得る投資手法は、「為替リスクを最小限に抑制しながらインフレに対抗するための一手段」だと考えています。
これが優れている手段だとは、心の中では多少思っていますが主張はしません。投資は有利不利よりも自分に合っているかどうか、続けられるかどうかで選ぶ方が長期的に良い結果をもたらすというのが私の持論です。
逆に為替リスクを呑み込んで構わないという人であれば、現在の金利水準における外貨建てMMFは良い選択肢だと思います。
ただし為替が動いた時にどのような戦略を採るか、あらかじめ決めておく必要はあります。円安であり続けるなら継続すればいいでしょうが、いざ円高に動いた時は継続するのか売却するのか、そして売却するのならその資金の置き場所はどこにするのか、といった戦略です。
そしてとても大事な事を書いておきます。「為替は読めません」。
大事なことなので繰り返します。「為替は読めません」。
X(Twitter)を始めネット上などでは為替が読めると主張する意見がありますが、そういう意見の9割は嘘で残り1割は詐欺です。まぐれ以上の理由で為替を予測することは不可能と考え、だからこそ変動した時の戦略を決めておくのが大事だと考えます。もちろん次の戦略を決めることは重要なのは、クラウドファンディング投資も例外ではありません。
まとめ:例外が一つ
ここまで外貨建てMMFとクラウドファンディングをどう考えていけばいいか、私なりの意見を書いてきました。
まとめとしては「比較対象じゃないから各自の好きな方でいいんじゃない? ただ【次の手】は常に必要だよね」というものになりますが、ここで補足というか例外を一つ。
日本でアクセスすることのできるクラウドファンディング投資のほとんどは円貨建てですが、一部には外貨建てのクラウドファンディングも存在します。そして米ドル建てのクラウドファンディングと米ドルMMFであれば、十分比較対象になり得ます。
CDS指数の考え方を適用すれば、多少乱暴な言い方になりますが年利5%前後の米ドル建ファンドには現状、新規に(つまりドル転して)投資する旨味がありません。それなら破綻リスクが極小である米ドルMMFの方が有利だと考えます。
米ドル建ての資金がたまたまあるなら別ですが、クラウドファンディング投資をする場合は円貨建て案件に投資し、為替が落ち着いてから再検討しても十分間に合うでしょう。
私も米ドルで持っている資金についてはそのまま継続投資していますが、現在の為替水準と金利水準から新規でドル転してファンドに投資することは見送っているのが現状です。
あと単なる当てずっぽうですが、最初のニュースは何となく円安天井フラグみたいにも感じるんですよね。