普段はあまりネガティブな記事を書かないようにしていますが、今回はちょっとだけ。
人気の不動産投資型クラウドファンディングについて、仕組み上の問題点を挙げてみます。
<目次>
因果の誤り?
クラウドファンディング投資について時々見かける意見に、「融資型は危険、不動産投資型はそれに比べて安全」というものがあります。
これは正しいでしょうか?
結果だけを見ればこれまで問題が起きたファンドは全て融資型であり、不動産投資型では(私の知る限り)問題が起きていません。そのため先のような結論に至ってもしかたないかもしれません。
ただ黎明期からこれまで、地雷を踏みつけながらも獣道歩いてきた系投資家(笑)の私としては、これは因果の誤りかもしれないと考えています。
なんであれ黎明期の投資商品というのは制度設計の曖昧さ、規制が確立されていない等の理由により多くの問題を抱えるものです。それはクラウドファンディングのみならず、例えばFX、仮想通貨、NFT等も同じです。
そして投資型クラファンの黎明期には、融資型しか存在しませんでした(ここ重要)。
様々な不確実性を孕む黎明期において、問題の全てが融資型で起き不動産投資型で起きなかったのは当然です。不動産投資型は存在しなかったのですから、存在しない投資商品で問題が起きる道理がありません。
今のクラウドファンディング
不動産投資型クラウドファンディング事業の法制度が整備されたのは、私がクラファン投資を始めてから5年後の2017年。国土交通省により不動産投資型へのテコ入れが2019年にあり、多くの事業者が参入を始めたのは2020年以降。
一方で融資型クラウドファンディングの誕生は2008~2009年のことで、私がクラウドファンディングで投資を開始したのは2012年。そして融資型で様々な問題が発生したのは、2018年~2019年に集中しています。
こういう歴史を考えると、不動産投資型に参入する事業者はすでに融資型の問題を見てきています。融資型と不動産投資型では仕組みが異なるとは言え、何らかの対策を打っていたことも想像に難くありません。
もし日本のクラウドファンディング黎明期において、存在したのが融資型ではなく不動産投資型だったらどうなっていたか。もしかして全ての問題は不動産投資型で起きたかもしれません。
そんなifを語ることに意味はありませんが、融資型でしか問題が起きていないのはこういった歴史の影響がある、ということは知っておく必要があると思います。
そして今サービスを続けている融資型も、様々な対策を打っているのは言うまでもありません。
それぞれ、何に投資をしている?
融資型クラウドファンディングと不動産投資型クラウドファンディングは、それぞれ何に投資をしているのか。
細かく言えば事業者の背景やファンド一つ一つを精査しなければいけませんが、ざっくり言うだけなら簡単です。
融資型は「会社そのもの」に、不動産投資型は「特定の不動産」に投資をしています。
なので融資型の場合には
・貸付先の与信や財務状況
・担保や保証の内容
・借入を行う必然性や妥当性
・返済に至る戦略
などを勘案して投資判断を行う必要がありますし、一方で不動産投資型の場合には
・不動産の収益性、安定性、価格下落リスク
・仕入れ時のディスカウント
・優先劣後方式、マスターリース方式などによるリスク抑制
・事業者の得意分野や目利き
などが投資判断に用いられます。
そして一つ重要な点として、不動産投資型で組成できるファンドの範囲はかなり狭いという点が挙げられます。
不動産投資型で扱えるファンドは不動産から発生する収益(賃料収入や売却益)に限られ、例えば信託受益権化された不動産や、他者の不動産を対象にしたファンドを組むことはできません。こういったより複雑なファンドを組成するためには、国土交通省管轄ではなく金融庁が管轄する融資型を用いる必要があります。
不動産投資型クラウドファンディングのみに投資を行うことは、つまり不動産に集中投資を行うことです。一方で融資型のクラウドファンディングは、不動産以外にも様々な仕組みの投資をカバーできる多様性があります。
なので融資型・不動産投資型を問わず様々なファンドに投資を行い、投資対象を分散すると同時に金銭的リターンや特典を受け取るというのが、私の基本戦略です。
不動産投資型クラウドファンディングの懸念点
ここまでは融資型と不動産投資型の歴史や、それぞれ何に投資をしているかを紹介してきました。
過去融資型で起きた問題(一部はまだ解決していません)や、不動産投資型ではこれまで問題が起きていないことから、現在では不動産投資型に人気が集まっていますが、ここではあえて不動産投資型の懸念点を紹介します。
前述の通り、不動産投資型クラウドファンディングは「特定の不動産」に対し投資を行うものであり、会社に対する投資ではない点に注意が必要です。
過去に問題が起きたファンドは、その大部分がノンリコースローン(*)であり、担保以外の資産による返済を求めることができなかったことが影響を大きくしました。
*特定の資産・事業等から生じる収益のみを返済原資とするローン。
そして不動産投資型クラウドファンディングは、仕組みとしてはノンリコースローンです。例えば匿名組合の場合、事業者の損失は劣後出資に留まります。
もちろん不動産投資型の事業者は、ファンドで損失が起きないよう適切な運用を行ってくれると期待していいでしょう。ですが万が一の場合に劣後出資が全損したら、事業者に対してそれ以上の補償は要求できないルールになっています。
こう考えると、不動産投資型は対象不動産の種類や出口戦略の妥当性が重要になってくることは間違いありません。特に最近では、日本における不動産の風向きが少し変わっているようですので。
いずれどこかのファンドに問題が起きるのは避けられないでしょう。そしてそれは融資型かもしれませんし、不動産投資型かもしれません。
これは危険を煽っているわけではなく、単に投資というのはそういうものだからです。得があるから損もあるのではなく、損の可能性の中から得を拾うのが投資だと私は思っています。
まとめ
今回は人気の不動産投資型クラウドファンディングについて、あえて懸念点を書いてみました。
私自身が融資型からクラウドファンディングを始めた(というか、前述の通り黎明期には融資型しかなかった)ため、どちらかと言えば融資型を贔屓していることは否めません。その点については色眼鏡をかけてください。
なんだかんだ言っても私自身がクラウドファンディング投資に1億円以上突っ込んでいて、いくら分散しているとは言えクラウドファンディング投資そのものとは一蓮托生の関係にあります。
そしていくつかの事業者とつながってもいる私がクラファン投資を止めていないということは、つまりそういうことです。
ただクラファン投資全体では問題が無くとも、いつかどこかのファンドで問題が起きることは避けられません。どのファンドで問題が起きるか誰も分からないからこそ、私は「卵は一つのカゴに盛るな」を実践しています。