今回はロボットアドバイザー各社を、パフォーマンスではなく、財務状況から調べてみました。
実はロボットアドバイザーの財務状況は、投資資産の安全性にはそれほど影響しません。
(理由については、記事の最後に取り上げます)
とは言え、投資している事業者の財務状況はやっぱり気になるので、調べてみました。
<目次>
比較対象
今回は、WealthNavi(ウェルスナビ)、THEO(テオ)、FOLIO(フォリオ)の三社を取り上げます。
ロボットアドバイザーはこれ以外に、楽天証券やマネックス証券などでも取り扱っていますが、これらは証券会社が本体であり、ロボットアドバイザーは主力事業ではありません。
となると、財務状況は主力の証券事業に引っ張られてしまうわけで、ロボットアドバイザーとして比較するのは適切ではないと考えました。
この三社はロボアドが主力事業、というのが比較対象を決めた理由です。
(正確には、FOLIOではテーマ投資も取り扱っていますが)
ロボットアドバイザー専業事業者の場合、その収入は運用額に対して年1%程度の運用手数料のみ。
各社の財務状況は、以下のようになっています。
ウェルスナビの財務状況
まずはWealthNavi(ウェルスナビ)から。
ウエルスナビは、この記事を書いている時点で日本では最大のロボットアドバイザー事業者で、2020年7月時点での預かり資金は2,600億円、ユーザ数は21万人。
2019年12月期のP/L(損益計算書)は、以下の通りです。
ちょっと驚きの大赤字です。
営業収益15億円は、ウェルスナビの2019年における平均運用額が1600~1700億円くらい? であることから、妥当な値です。
それに対して販管費が36億円ほどかかっており、これが赤字の最大の理由。
販管費36億円の内訳のうち最大は「取引関係費」の22億円あまり。
これがどこまでの費用範囲を含むかは分かりませんが、おそらく広告費も入っていると思われます。
つまり、ロボットアドバイザーを普及させるという活動に多くの資金が必要であり、その費用のために現状は赤字になっているというのが足下の状況のようです。
なおウェルスナビは、2019年12月期に複数回の増資及び資本金の額の減少を行っており、2019年12月期末時点で資本準備金は72億円あまり、自己資本比率は40%以上となっています。
(以上、出典はhttps://www.wealthnavi.com/company/disclosures)
THEOの財務状況
日本最大の運用高のウェルスナビでさえ大赤字なので、何となくオチは見えたようにも思いますが、次です。
次は「お金のデザイン社」が運営するロボアドサービス、「THEO(テオ)」。
2020年2月の時点で、運用総額600億円、口座数が11万5千件という情報があります。
2020年3月期のP/Lは以下の通り。
(長いので、一部のみ表示しています)
手数料収入が約4億円と、ソフトウェアの開発売上高が1億円、営業収益は総額約5.6億円。
これに対し、営業費用10.2億円、一般管理費10.1億円などがあり、当期純損失は約18.5億円とこちらも大赤字です。
THEOは2020年3月期、新株予約権は発行していますが、発行済み株式数に変動はありません。
資本準備金は120億円あまり、自己資本比率は69%です。
(以上、出典はhttps://www.money-design.com/services/theo-trust/history/finance-condition)
フォリオの財務状況
最後はフォリオ。ロボットアドバイザーにAIを搭載した「ROBO PRO」が個人的に注目株ですが、財務状況に関して言えばウェルスナビとTHEOがこういう状況だけに、こちらもだいたいお察しです。
下記、2020年3月期におけるP/Lの一部です。
分かっていましたが大幅な赤字。
営業収益約5,000万円に対し、販管費で23億円となっています。
もっとも、AI×ロボットアドバイザーの「ROBO PRO」サービス開始が2020年1月、LINEとの協業であるLINEスマート投資が本格的に稼働したのは2019年後半ということで、営業数字には折り込まれていない可能性が高く、次の決算に注目する必要があると感じました。
(以上、出典はhttps://www.jsda.or.jp/kyoukaiin/kyoukaiin/files/1238_folio_202003.pdf)
財務状況を気にしなくて良い理由
ここまでロボットアドバイザー3社を見てきましたが、いずれも現状は赤字状態を増資でしのいでいる、という印象です。
ただし、この3社の財務状況が、投資家の資金に影響を与えるかということについては、あまり気にしなくて良さそうです。
というのも、基本的に金融商品取引業者においては、自己資産と顧客資産の分別管理が義務づけられています。
例え事業者がデフォルトを起こしても、サービスはなくなりますが、顧客資産がなくなることはありません。
また万が一分別管理ができていなかったなどの理由で、投資家の資金を全額返せない場合でも、投資者保護基金が投資家の資金を上限1,000万円まで補填します。
この二重の安全装置は、ウェルスナビ、THEO、フォリオ全てに共通しています。
ちなみにこの三社の中で、個人的な注目株はフォリオのROBO PROです。
AI搭載ロボットアドバイザーの実力は、先のコロナショックでも十分に発揮されました。詳しくは以下の記事をごらん下さい。