今回は雑記を一つ。
ブログにおける表現について、常日頃私が思っていることを書いてみます。
<目次>
ブログとコピーライティング
ブログにはコピーライティング(コンテンツライティング)のスキルが必要、というのは良く言われる内容です。
コピーライティングというのは、読者の行動を促すような文章を書く技術のことであり、平たく言えば言葉によって他人の行動を誘導・支配するやり方を指します。
コピーライティングを考える上で重要なマインドセット(思考パターンとして)、3つのNOT、あるいは5つのNOTと言われるものがあります。
3つのNOTとはブログ記事で言えば「読まない(Not Read)」、「信じない(Not Believe)」、「行動を起こさない(Not Act)」こと。
ブログ記事は公開したところで必ず読んでもらえるものではないですし、内容を信じてもらえるわけでもない。そして記事に書いてあるような行動を起こすとも限らない、というものです。
この3つのNOTに加え「記事を開かない(Not Open)」、「記事を理解しない(Not Understand)」を含めて5つのNOTと言われることもあり、このNOTを打ち破っていくのがコピーライティングの目的です。
ヒッチンズの剃刀
ブログを含めた物書きはそこそこ長い間やっているので、コピーライティングに関する通り一遍の知識はあります。
しかし、それを邪魔するのが私の経歴だったりします。
私は投資やってたり物書きやってたりするので、金融とか営業とかの出身かと時々聞かれることもあるのですが、実はまったく違います。
物書きは単なる趣味、会社では何でも屋(ただし金融には絡んでません)、そして出身はケミスト(物理寄り)です。
ケミストに限ったことではありませんが、論文を書く段においては文章における正確性を重視しており、曖昧な表現や読み手によって解釈に幅のある表現を忌避する傾向があります。
また当然のことですが、何かの主張をするとなればその証拠を出さなければなりません。
でなければ、 単位を落とす ヒッチンズの剃刀(「証拠なしで主張されたものは、証拠なしで却下することもできる」)が発動してしまいます。
そしてこれも化学ばかりに限った話ではありませんが、あらゆることを学べば学ぶほど断言できないことが多いと知り、一方で断言して何かを主張する輩の空虚さを知る事になります。
そしてまた他方で、断言する人の上っ面だけを見て信じる人の空虚さも。
背中でささやく声
ここまでは論文とコピーライティングの特徴を簡単に説明しましたが、この両者はかなり相性が悪いです。
というのも、論文はそれを読むことを前提として書かれており、また読む人間の多くは記事を理解し、信じなければ自ら反証を探しに行動することになります。
したがって論文には、コピーライティングにあるようなNOTの壁はそもそも存在しないわけです。
そんな論文を書いてきた身として、例えば「このファンドはオススメです!」と書こうとします。
そうすると、背中から囁く声が聞こえてくるわけです。
「当該ファンドがオススメである理由とその根拠は?」
「他ファンドと比較した場合、推奨に足る有意性のあるデータ、少なくとも定量化されたデータは存在するか?」
「その根拠とデータは反証に耐えうるか?」
かと言って背中からの囁きばかりを重視すると、今度はNOTの壁を超えられない文章となってしまいます。
いくら正確性を重視しようとした文章であれ、これは論文ではなくブログ。読まれなければ全てご破算であり、本末転倒です。
YMYLど真ん中
とは言え、当ブログメインの話題は雑談などではなく金融商品。
Googleの言うところのYMYL(Your Money Your Life、お金や健康など生活に大きな影響を与えるジャンルのこと)ど真ん中のジャンルであり、扱う記事の内容や文章表現には十分な注意が必要と自覚しています。
当ブログにおける全ての広告に「広告リンク」と明記しているのも、ダイレクトマーケティングを宣言しているのも、全てはYMYLを扱っていることが理由です。
そう考えると、エビデンスや文章表現の正確性を重視する論文スタイルは、YMYLジャンルのブログには合っているのかもしれません。
他人の認識や行動を変容させることを目的とする(悪い言い方をすれば、騙す)文章は会社員時代に様々書いてきましたし、変容させるためにデータをいかに細工すれば説得力を持つよう見せかけられるかも知っています。
ですが、それも会社を辞めた今となっては使う必要のない技術です。
なのでコピーライティングの技術は味付け程度にとどめ、YMYLジャンルであることを注意しながらブログを続けていきたいと思います。よろしければ今後ともご愛読のほどを。