不動産投資型クラウドファンディングの「TSON funding」を運営するTSON社で、「監査法人意見不表明に関するお知らせ」というニュースがありました。
今回の記事は、その続報です。
<目次>
前回の内容
9/21にTSON FUNDINGから送られてきたメール(タイトルは「森林再生53号(匿名組合書面ファンド)のご案内」)にて、「監査法人意見不表明に関するお知らせ」に関する言及がありました。
TSON社の公式サイトでは同内容が9/4に発表されていた(つまり、TSONの株主及び不動産サービスの利用者はその時点で知られていた)のですが、クラウドファンディングのユーザにはそれから2週間ほど経ってお知らせが来たという点については、改善の余地があると思います。
とは言え以前の記事でも書いた通り、監査意見不表明の判断が財務諸表全体の問題ではないこと、今後証拠が揃えば意見を表明するとの回答を監査法人から得ていることを考えると、そこまで本質的な問題ではないと判断しています。
(関連記事)
www.sallowsl.com
TSON社からの続報
この後TSON社からは9/26に、「2023年6月期発行者情報の提出遅延に関するお知らせ」がありました。
発行者情報というのは、ざっくり言えば決算情報や財務情報のようなものです。
お知らせの内容は、監査法人による監査が続けられているため発行者情報の提出が10月下旬になるというものでした。
・2023年6月期発行者情報の提出遅延に関するお知らせ(PDF)
また同じお知らせの中で、TSON社がTOKYO PRO Marketにおける上場廃止申請を行うことも明らかにされました。
理由としては、2023年6月期において関連当事者の取引が急増したことにより監査法人との調整・チェックに長い時間がかかったことを含め、今後のビジネスにおいて上場するメリットをデメリットが上回ると判断したためです。
・臨時株主総会招集のための基準日設定及び臨時株主総会の開催並びにTOKYO PRO Marketにおける当社株式の上場廃止申請に関するお知らせ(PDF)
TSON社に関する以前の記事で、「関連当事者の取引が複雑化して監査法人にギブアップされるくらいなら、上場を見直すなり監査法人を見直すなりすればいい」と書いたのですが、ここまで早く上場廃止を決断するとは思いませんでした。
もっともTSON社の場合はTPM上場とは言え、東新住建会長である深川氏が支配株主なので、上場廃止の影響はそこまで大きくないと思われます。
(ちなみに調べてて分かったのですが、民事再生から3年で終結決定とは深川氏、とんでもない豪腕ですね)
情報が出たのでネタバレ
前回TSON社の発行者情報遅延の件を記事にした時、私は「調べられる範囲(オープンな情報もナイショな情報も含めて)で調べたところでは、会社の本質的な問題ではない模様」と書きました。
その情報がメールで公表されましたので、以下ちょっとしたネタバレです。
融資型クラウドファンディング「CAPIMA(キャピマ)」は以前、TSON社向けに融資型ファンドを組成したことがあり、私はCAPIMAの経営陣と個人的なつながりがあります。
そのCAPIMAは今回TSON社と直接連絡を取り審議を行った結果、「監査法人の意見不表明は書類の遅れに起因し、監査は継続中」「TSON社の借入金融機関は事情を理解した上で懸念を示していない」「対象物件の担保価値は下落していない」などの理由より、現状で支障は発生していないという見解を出しました。
これらの情報の一部を私が事前に入手していたこと、加えてCAPIMAがTSON社のファンドを募集した時期が発行者情報問題と重なることから、ファンドを組成するにあたってのデューデリで問題になっていない=本質的な問題ではない、と結論し記事に追記をしたという経緯になります。
CAPIMAは融資型、TSON社は匿名組合型の不動産投資型というスキームの違いは考慮すべき点ですが、それも含めて大きな問題ではないと(あくまでも現段階では)判断しています。
ファンドへの影響
「発行者情報の提出遅延」&「上場廃止申請」のニュースは9/26に公表され、その後9/29からニュース公開後初のファンド募集が始まりました。
このファンドがどのくらい集まるかは興味を持っていましたが、結果としては募集枠を超える集まりになりました。
もっとも募集枠が4,000万円くらいと多いわけではなく、かつ年利6%・5ヶ月という好条件だったため募集枠を超えたという側面もあるでしょう。
今回のお知らせを受けての私の投資判断は変わらず、「良い条件の案件が出れば投資する」です。
(10/7追記)さらに続報出ました
10/6、TSON社から追加の続報が出ました。
・「2023 年 6 月期決算短信・日本基準(非連結)」の一部訂正及び2023 年 6 月期発行者情報の提出予定日の確定に関するお知らせ(PDF)
内容を簡単にまとめると、TSON社が第三者から請け負った(という見解の)工事が、実際は関連当事者から第三者への発注であったため、対象工事の売上について監査法人との間に見解の相違が発生したというもの。
すごく平たく言うとこんな感じです。
TSON社「うちが工事してるんだからうちの売上でいいよね」
監査法人「いやそれ関連当事者取引でしょ。売上修正しないと監査意見出せないよ」←ここで監査法人意見不表明が発生
T「うーん・・・まあそういうならしゃーないな」
監「そこ修正してくれたら、無限定適正意見(=監査お墨付き)出すよ」
T「OK」
両者納得→発行者情報の提出は10月末
そして今後も関連当事者取引が大量に発生する予定であり、上場によるメリットよりデメリットが大きくなったことから上場を取りやめることにした、と推測されます。