以前の記事に、内容を追記・修正してリライトしました。
東証一部のトーセイ社の不動産投資型クラウドファンディング、「TREC FUNDING」の話題です。
今回は、TREC FUNDINGと一般の不動産投資型クラウドファンディングの違いを、図で比較してみました。
TREC FUNDINGは普通の不動産投資型とは異なるところがあり、それによる利点欠点の違いがありますので、投資に興味がある方は参考にしてみて下さい。
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<目次>
比較その①:投資時点
ここでは、TREC FUNDINGを「トーセイ不動産クラウド」、それ以外のものを「一般の不動産投資型クラファン」とします。
投資時点において、多くの不動産投資型クラファンは「優先劣後出資」という仕組みがあります。
これは同じ案件について投資家と事業者が出資し、事業者の出資が劣後出資となることで、リスクを低減する仕組みです。
一方でトーセイ不動産クラウドには優先劣後の仕組みはなく、投資家もトーセイも優先順位は同じです(これをセイムボート方式と言います)。
図示すると、以下のような違いがあります。
*ここでは簡易的に説明をするため、「出資総額=不動産価格」としていますが、実際は異なります。
比較その②:損害が出る場合
ここでは例として、不動産価格が1億円の場合を取り上げました。
運用期間が完了した後、不動産が予定通りの価格で売却できる場合は、何の問題もありません。
では例えば、不動産の価値が10%落ち、9000万円でしか売れなかった場合はどうなるのか。比較してみます。
一般の不動産投資型クラファンでは、不動産の価値下落はまず劣後出資から影響を受けます。
仮に不動産価値が10%落ちた場合、劣後出資が10%以上あれば、基本的には投資家の元本は損害を受けません。事業者が価値下落の1,000万円分を負担して終わり、です。
一方トーセイ不動産クラウドの場合、投資家と事業者の優先順位に差はありません。
不動産の価値が10%落ちれば、投資家、トーセイともにその損失を負担します。
これだけを取ると、トーセイ不動産クラウドの方が価値下落局面では不利に思えるかもしれませんが、実はここにトーセ不動産クラウドの気付かないポイントが一つあると考えます。
比較その②の2:トーセイ不動産クラウドのポイント
そのポイントとは、「トーセイ不動産クラウドの取得価額は、実際の不動産鑑定額より低くなっている」ということです。
色々な情報を見ると分かるのですが、TREC FUNDINGの1号・2号案件はいずれも、不動産取得価額(消費税や取得税、鑑定費用、各種報酬、供託金と予備費等除く)は不動産の鑑定評価額よりも1割程度安くなっています。
ということは、多少の価格下落なら出資した元本が毀損しない、ということを意味しています。
これは方式こそ違えど、元本に対するクッションになっているのではと捉え、優先劣後方式と同様の効果があるのでは、と考えています。
さらにこの「不動産取得価額>不動産鑑定評価額」という事実は、トーセイ不動産クラウドにおいてはもう一つの利点も生み出します。
次で説明します。
比較その③:より高く売れた場合
先ほどは1億円の不動産が9,000万円でしか売れなかった場合を比較しましたが、それでは逆に、不動産がより高値、+10%の1億1,000万円で売れた場合を想定します。
この場合、TREC FUNDINGの利点がはっきりと分かります。
一般の不動産投資型クラファンの場合、想定よりも高く売れたその儲けは、事業者が取ります。よりリスクの高い劣後出資を行っている以上、儲けが出れば優先的に取っていくのは当然の権利です。
一方でTREC FUNDINGの場合、事業者と投資家の優先順位は同じなので、儲けは投資家と事業者が同様に取ります。
ここに先ほどの「取得価額>不動産鑑定評価額」という事実を重ね合わせると、不動産が鑑定額通りに売れれば取得価額よりも高くなる=売却益が期待できる、という意味になります。
案件毎に条件は変わりますが、1号ファンド、2号ファンドの条件を見ると鑑定評価額で売却できた場合の売却時分配を予定分配率としているようですので、仮に不動産鑑定評価額以上で売却が出来た場合は予定分配率より高い分配率がなされるのではないかと考えています。
まとめ
以上、まとめます。
・TREC FUNDINGの1号、2号ファンドでは優先劣後の仕組みはなく、投資家と事業者の出資は同順位であった
・TREC FUNDINGの1号、2号ファンドでは、不動産取得価格は鑑定評価額より1割程度低く、この分が実質的に投資家の出資を守るクッションになっていると考えている
・優先劣後方式を採用しているファンドと比較すると損失を受けるリスクは高いと思われるが、対象不動産がより高く売れた場合、TREC FUNDINGの方式の方がそのリターンも享受できるという一長一短があると見受けられる。
事業者がこういった不動産の売買やファンドを手がけているトーセイであることを考えると、他社がそろって優先劣後を採用しているところ、そういった仕組みを採用しないことに、実際の不動産投資に近い投資の仕組みを提供しているのではないかと私は思っています。
2号案件は集まりきらない分をトーセイが追加出資し、特例事業者(SPC)を子会社化することになりました。トーセイのセイムボート出資額が増えるということは、子会社であるSPCに損をさせられないというモチベーションにつながるのではないかと思います。
(参考記事)
www.sallowsl.com