以前にロボットアドバイザー各社を、パフォーマンスではなく財務状況から調査したことがありました。
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今回はその続編になる記事で、今度はクラウドファンディング事業者の財務状況を調べてみました。
クラウドファンディング事業者と言っても色々ありますので、類型ごとに何社か抜き出してみます。
<目次>
- 購入型:CAMPFIRE
- 購入型:MakuakeとReadyfor
- 融資型:SBIソーシャルレンディング
- 融資型:クラウドバンク
- 不動産投資型:CREAL
- 不動産投資型:FANTAS Funding
- クラウドファンディングにおける事業者の安定性
購入型:CAMPFIRE
購入型クラウドファンディングの有名どころと言えば、創業順にReadyfor、CAMPFIRE、Makuakeの3社。
このうちCAMPFIREは、最新の決算において赤字状態になっています。
2020年4月期における当期純損失は約9.7億円、類型赤字は約22億円。
それでも増資のために自己資本比率は50%を超えています。
(https://catr.jp/settlements/c257a/147791 より引用)
購入型:MakuakeとReadyfor
CAMPFIREと対照的なのは、サイバーエージェント子会社でマザーズに上場しているMakuake。こちらは黒字。
2020年6月の第三四半期で、売上高約21億円、純利益約3.55億円と好調です。
第三四半期におけるファンドの購入総額は約94億円なので、手数料は22%くらいという計算になります。
(決算短信 https://ssl4.eir-parts.net/doc/4479/tdnet/1862285/00.pdf より引用)
Readyforについては詳細な情報がありませんが、下記の記事によれば売上は右肩上がりで健全な利益を出しているとのことです。
コロナ禍で互助の必要性が言われる中、購入型クラウドファンディングには追い風の状況です。
伝染病を好機と捉えるのは不謹慎だ、などという声もあるでしょうが、感情論を抜きにして考えれば、世界を変えていく好機であるのはまちがいありません。
次の決算発表で、購入型クラウドファンディングがどこまで伸長するかに注目しています。
融資型:SBIソーシャルレンディング
購入型クラウドファンディングは、事業者によって違いはあれど手数料は10~20%程度。
対して、融資型クラウドファンディングの手数料は1~3%程度と、大きな開きがあります。
「購入」とは異なり、「融資」の手数料は投資家に払われる利息に直接影響があるだけに、購入型に比べ手数料を上げることが難しいのは事実。
それゆえ、融資型クラウドファンディングにおける財務状況はかなり厳しいものとなっています。
推測を含みます(ただし自信はあります)が、ほとんど全ての融資型クラウドファンディング事業は、まともな利益は出ていないと思われます。
私が知る限り例外は二つで、その一つは日本最大級の融資型事業者、SBIソーシャルレンディング。
(maneoも黒字でしたが、ああいうことがあったので除外)
2020年3月期の最新の決算公告では、SBIソーシャルレンディングの営業収益は約32億円、純利益3.4億円で、累計でも黒字転換しています。
(決算公告:https://www.sbi-sociallending.jp/assets/pdf/SL_BS_PL_13.pdf)
参考記事:
www.sallowsl.com
融資型:クラウドバンク
もう一つ黒字の事業者として、クラウドバンクを運営する日本クラウド証券があげられます。
ただし先のSBIソーシャルレンディングが、クラウドファンディング専業だったのに対し、日本クラウド証券は一部投資・コンサルティング事業も行っています。
直近の決算では、業務委託契約に基づく損失を3億円計上していますが、それを除くと営業収益約8.5億円に対して経常利益は約3.2億円。
累計黒字も6.8億円あり、自己資本比率22%は立派な数字だと思います。
(決算公告:https://crowdbank.jp/pdf/disclosure_2020.pdf)
不動産投資型:CREAL
不動産投資型クラウドファンディングには、上場会社も数多く参入しています。
不動産投資型「専業」という事業者は、私が知る限りありません。たいていの会社が不動産の売買会社やデベロッパー会社等であり、ビジネスの拡大や潜在顧客層の獲得のために、不動産投資型クラウドファンディングを運営しているのが実状です。
そんな中で二つほど、私が多く投資している事業者を取り上げ、その財務状況(正確には、運営母体の財務状況)を紹介したいと思います。
最初はCREAL。総合資産運用会社の「ブリッジ・シー・キャピタル」が運営しています。
2020年3月期の当期純利益は約1億円。ちなみに2019年は純利益1.5億円でした。
不動産中心の資産運用会社で、新型コロナ状況下で純利益25%ダウンで済んでいるなら、優秀な成績ではないでしょうか。
(引用元:https://catr.jp/settlements/124be/173735)
不動産投資型:FANTAS Funding
最後は同じく不動産投資型の、FANTAS Fundingです。
IT×不動産、AIによる不動産売買の適正価格サービスなどを提供する、FANTAS Technology社が運営しています。
不動産投資型は一般に利率が高くない(3~5%程度)案件が多いのですが、FANTASでは古民家再生プロジェクトなどを扱う案件では、8%くらいの高利率となる場合もあります。
FANTAS Fundingの2019年11月期における当期純利益は約3.2億円、利益剰余金も約8.6億円積み上がっています。
前期比の純利益は2倍以上に伸長しており、伸び盛りの会社と言えると思います。
(引用元:https://catr.jp/settlements/f45b7/143611)
クラウドファンディングにおける事業者の安定性
ロボットアドバイザー事業者の財務状況を比較した際には、まとめとして
・ロボアドは分別管理がされていること
・万が一分別管理されていない場合でも、投資者保護基金から上限1,000万円まで補償があること
を理由に、ロボアド事業者の財務状況が赤字であってもそれほど影響はない、と書きました。
一方でクラウドファンディング事業者の場合、基本的に分別管理は行われていますが、信託保全(信託銀行と契約を結び、資産を委任すること)は一部の事業者でのみ行われています。
*ただしこれは預り金だけの話であり、投資している資金は常にリスクにさらされています。ロボットアドバイザーにおいても、含み損まで補償されるわけではないのと同じです。
クラウドファンディングの類型(購入型・融資型・不動産投資型)によっても異なりますが、事業者の破綻は、投資家資金の損害につながる可能性が多くあります。
クラウドファンディング事業者選びは、信頼性を第一に行う必要があります。
クラウドファンディングに投資する場合、信頼できると自分で判断する事業者に集中投資するか、それとも資産を分散させてリスクを抑制するか。私は後者を選びましたが、ここは一人一人の投資家の考え次第でしょう。