時事ネタに関する雑記を一つ。
いつの世もあるだろう、「隣の芝生は青い」の感覚。リアルなお金が絡むと、それはそれは面倒になってしまいます。
不満は言わせておけばいいじゃないか、という意見もありますが、断絶が生まれるのは決して良いことではありません。
そんな話題について、私の意見を書いてみます。
<目次>
きっかけはテレビ報道
新型コロナ感染拡大による非常事態宣言、飲食業や旅行業などの苦境、それにも関わらずの株高で一部では大きな利益を得ている人もいるという現状。
これだけの好材料が揃っていて、マスコミが煽りに使わないはずもなく、とあるテレビで以下のような「ネットの声」とやらが紹介されていました。
(*画像は拾いものです)
日経平均が3万円を付ける株高に個人投資家が増加し、中には1000万円を超える利益を生んだ投資家もいるという内容。
そういった事実に対して投資しない人から不満の声が噴出している、という内容でした。
報道されていたネットの声とやらが、本当に多くの人の声を代弁しているかについては、とりあえず置いておきます。
テレビの中の人が自作自演でも「ネットの声」と言えるわけですが、まあそれはともかく。
いくら考えても、ってことはないでしょうが
「コロナ禍で子どもが進学をあきらめたりギリギリの生活をする人が大勢いる中で、株で投資家はもうかっているとかいくら考えても理由が分かりません」
というこの自称ネットの声を信じるとして、もし本当に「いくら考えても」分からないのであれば、それがこの人の視野の限界であり、「もっと見聞を広めなさいな」で終わってしまう内容だと思います。
善し悪しの議論ではなく、世の中はそういうものです。
それが分からないということ自体、日本に生まれて幸せだということなのかもしれませんが、日本にあっても「格差はあってはならない」というお題目は、ただのキラキラとした理想論でしかありません。
「いくら考えても分からない」と本当に言う人は、それほど多くないと信じたいです。
このように言う多くの人は、本当は分かっているはずです。ただその事実をまっすぐに見ることができないから、「理解したくないもの」を「理解できない」と言っているだけで。
乗らせたい人、乗りたい人
このような「ネットの声」を取り上げる背景には、「困窮する労働者(弱者)と、利益を上げる投資家(強者)」という分かりやすい対立関係を煽る意図もあるでしょう。
シンプルな構図は分かりやすいですが、分かりやすいということは往々にして正確ではありません。
現在の日本においては、労働者と投資家は決して相反する概念ではなく、「労働者にして投資家」という人々も(私も含め)多くいます。そういう人たちは本業でコロナの影響をある程度受けつつ、投資家として利益を享受しているわけです。
しかし「コロナで大変な思いをする労働者であると同時に、株高で利益を得る投資家でもある」人たちが、先のテレビの話題で取り上げられることはないでしょう。
だって「分かりにくい」ですから。
分かりにくければ番組から離脱される。だから煽るような文句で視聴者を集め、離脱させないように分かりやすい表現ばかりを用い、そのままでは正確性がないので説明責任から逃げるために「ネットの声」や「街角の声」を使う。
どれも良くある方法です。記事のコピーライティング技術や、キャッチコピーの付け方などとも共通するところがあります。
何かを紹介するブログ記事で、第三者のツイートを引用して自分の意見は言わない、というのも同様の手法です。
これらはただの技術であり、善し悪しを議論する類のものではないと思います。いわゆる営業トークのようなもので、乗らせたい人がいれば乗りたい人がいるだけのことです。
投資家は「ズルい」のか?
相対的に所得の低い人は、収入でモノやサービスを購入する割合が多く、消費性向が高い傾向があります。
一方で相対的に所得が高い人は、収入を金融市場に投資する割合が多く、消費性向が低い傾向があります。したがって今回のコロナ禍で資金が流入すれば、格差は拡大していく傾向があります。
その結果として富裕層が国策や政治に影響力を持ったり、あるいは株などの投資商品に飽き足らず現物資産まで買い占めるようなことになるのは防がなければなりません。
ここまでは、おそらく多くの人の賛同を得られると思います。
しかし一方、投資家が「ズルい」か? と言われれば、私は投資家の端くれとして断固反対します。
投資家は自分の資本を自己責任でリスクにさらし、適正に管理することでリターンを得るものです。ズルくも何でもなく、資本主義のルールはそういうものです。
ましてやその資本の種銭を労働で積み上げていったのなら、それは労働者にとってあるべき姿であり、決して敵視する存在ではないでしょう。
(*お金に色はないので、法律に触れないなら種銭の出所は何でも構いませんが)
それでも投資家は労働者の怨敵であり、労働者からの搾取を許してはならない、と原理主義的に喚きたくなる方は、一度肩のあたりを視てもらった方がいいかもしれません。ひょっとすると、マルクスとかいう亡霊が取り憑いているかもしれませんので。
でも、言い過ぎも良くありません
投資家は「ズルい」わけではありません。
しかし一方で、投資家は正当性を主張しすぎるべきでもない、と考えます。特に投資家クラスタの外には。
株高で投資家が恩恵を受けるのはズルい、という一部意見に対して、的外れだと思うのは私も同じ。
— SALLOW@クラウドファンディング投資家 (@SALLOW_SL) 2021年2月24日
でもそれを声高に主張するのは断絶を生むだけで、巡り巡って投資家にも悪影響になる思います。
理解させるには、言葉遣いも大事。
多くの人間は、事実より感情で動くものです。言い方は悪いですが。
「私たちは資本主義に則った正しいことをやってるんだ! 分からない奴が喚くな!」
などと上から目線で放言してしまっては、反発を招き「投資家ってのは胡散臭い奴だ」と思われるのが関の山。
そして投資家に否定的な世論が席巻してしまったら、投資収益への課税強化など、投資家にとって望まない政策が通ってしまうこともあり得ます。リスクを正しく管理するのが投資家なら、こうした望まない結果が起きることはすなわち、リスク管理の失敗でしょう。
投資コミュニティの外の人間には、投資家の損得などどうでもいいのです。
むしろ、人の不幸は蜜の味です。そのくらいの考えでいたほうが良いと思います。
投資しない人間に誤解されたままでは、いずれ割を食うのは投資家側かもしれません。それを防ぐためにも、投資家はズルいなどと言われても、笑顔で受け流して有益なアドバイスの一つでも行うのがスマートな行為ではないでしょうか。
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リスク管理が大切なのは、投資だけではありません
2/26、日本株式は日経平均マイナス約1,200円と大幅な下落が起きました。
私のメイン投資は相場影響を受けにくいクラウドファンディングですが、ロボットアドバイザーを通じて間接的に世界中の株にも投資していますので、一連の下落により十数万円くらいは含み益が減りました。
これを自己責任、自業自得と言われれば、何の反論もなくその通りです。
だからこそ得も自分だけのものになるわけで、投資に限らずリスクを負ってリターンを得る行為を、他人にズルい呼ばわりされる所以はありません。
ズルいと思うのなら、自分も参加すれば良い。参加する種銭がないなら稼げば良いというだけのこと。当たり前のことすぎて、筋の通らない意見に反駁したくなる気持ちもよくわかります。
ただ投資家側の意見を大上段に掲げるのもリスクがあるわけですから、投資家ならそのリスクも考えましょうよ、というのが私の意見です。