ECF(株式投資型クラウドファンディング)の話題です。
近日中に始まることが期待される、未上場株式のセカンダリー市場がECFに何をもたらすのか、推察してみました。
<目次>
プライマリー市場とセカンダリー市場
最初に、簡単ですがプライマリー市場とセカンダリー市場の違いについて説明します。
プライマリー市場は、ベンチャー・スタートアップ企業から、株式(もしくは新株予約権)がプラットフォームを通じて投資家へ発行されます。
この株式などの流れはあくまでも一方向で、例えばEXIT(株式などの現金化)の一手法として、会社による株券の自己取得が起きるなどの例外がなければ覆りません。
一方でセカンダリー市場は、投資家の間でベンチャー・スタートアップ企業の株式を売買することができます。言わば非上場株式を、上場株式と同様に流動性のあるものにする、というのが最大のポイントです。
セカンダリー市場の構想
ECFプラットフォーム「FUNDINNO(ファンディーノ)」を運営する日本クラウドキャピタル社は、2021年6月に約20億円の第三者割当増資を実施しました。
そのプレスリリースに以下の通り、未上場株のセカンダリー市場に関する構想が取り上げられています。
日本クラウドキャピタルでは今回調達した資金を活用して組織体制を拡充し既存事業を強化するほか、新サービスとなる未上場株のセカンダリーマーケット(個人間で売買できる流通市場)の構築にも取り組むという。今後さらに国内で株式投資型CFを広げていくべく、特に「投資(案件)の多様化とエグジット手段の多様化」を進めていく方針だ。
(https://signal.diamond.jp/articles/-/745 より一部引用)
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おそらくもう少し時間がかかりそうですが、いずれはベンチャー企業の未上場株を投資家同士が自由に(あるいは、一定の制約のもとで)売買できる時が来るのだと思います。
そうなった時に何が起きるのか、想像してみました。
メリットは明らかです
未上場株のセカンダリー市場が登場した時の、最大のメリットは明らかです。
セカンダリー市場によって投資家同士が売買を行えるようになれば、これまで株式投資型クラウドファンディングの大きな問題点であった、流動性の問題が一定程度解決します。
結果として、これまでは「応援したい企業だけど、どうなるか分からないし、資金が拘束されるので不安」と投資に二の足を踏んでいた層を取り込むことができ、投資家が増えて取引が活発になるのはまちがいないでしょう。
しかし、「これまで投資を行わなかった層を取り込む」ということは、「今までのECF投資家とは異なる考えを持つ層を取り込む」、ということでもあります。
予想される副作用
これまでのECF投資では、短期~中期的なリターンよりも、ベンチャー企業そのものや経営者、あるいはそのビジネスに魅力を感じ、応援したいという気持ちで投資することが多いと感じています。
一方でセカンダリー市場が開放された場合、応援の気持ちよりも実利を求める投資家が参入してくるのはごく自然なことで、結果としてこれまでのECF投資のあり方が多少変質することが予想されます。
もしくは2021年初めの前澤ファンドのように、
「大資本を持つ者がECFを利用して、前途有望と思われる企業に大資本を投下し、既存の個人株主を退場させる行為」
というのが今後、ベンチャー企業についても起きる可能性もあると思われます。
もしも私が大資本を持つ者であったとしたら、ECFのセカンダリー市場を青田買いの場所としてマークはしておくでしょう。
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変化することが必要なら、変化した先は常に正しい
セカンダリー市場の開放は無制限に行われるというわけではなく、もしかすると「開放したい企業/開放したくない企業」という選択肢があるのかもしれませんし、あるいはロックアップ期間が設定されるかもしれません。
セカンダリーを開放しなかったり、ロックアップ期間を設けたりすれば、それだけ投資家からの資金は集まりにくくなりますが、それでも良いという企業だって出てくるでしょう。
どんな変化が起きるかはこれからのお楽しみとなりますが、ただ、一つだけ言えることがあります。
現在のECFにおいて、市場規模の拡大が至上命題の一つである以上、セカンダリー市場の開放によってECFの性質が変わることは必然だ、ということです。
ECFの規模が拡大しなければ一般に根付くことはなく、一般に根付かせたいなら変質を受け入れなければならない。
ならばどんな変化が起きたとしても、その変化した先は常に正しいのだと考えます。
投資家には常に「投資しない」という選択肢があります。自分の好みにあった企業に気軽に投資できるという意味で、セカンダリー市場の開放は、投資家の選択肢を増やす結果となるのではないでしょうか。