今回は不動産投資型クラウドファンディング全般の話題を一つ。
不動産投資型に匿名組合と任意組合という二つの形があるのは、詳しい方ならご存じの事でしょうが、そのあるべき形について私見を述べてみます。
<目次>
匿名組合と任意組合
不動産投資型クラウドファンディングには、大きく分けて二つの類型があります。
一つは「匿名組合」で、もう一つが「任意組合」。
いずれも大雑把に言えば「事業者に対して出資を行い、事業者の生み出した利益を受け取る」という点に違いはありませんが、匿名組合は匿名で出資が行われ、事業者の経営自体には関与しません。
これに対して任意組合は事業者と共同の事業を営み、事業に伴う責任と利益を受け取る点が異なります。
この違いにより、不動産投資型クラウドファンディングにおいては
匿名組合 → 雑所得、多くの場合は優先劣後出資(あるいはセイムボート)の仕組みあり
任意組合 → 不動産所得、優先劣後出資はなし(セイムボートは一部あり)
と、ファンドや利益に対する課税の仕組みが異なることになります。
一部事業者では任意組合のファンドを募集しているところがありますが、多くの不動産投資型クラウドファンディングにおいて、ファンドは匿名組合の場合が多いのが現状です。
任意組合の目的の一つは「節税」
匿名組合型とは異なり、任意組合型の不動産投資型クラウドファンディングでは出資者が実際に物件の持分を所有します。
そのため、小口の現物不動産投資と同じ特徴を持ち、同じメリットが得られることになります。
不動産の場合、相続税評価額と市場価格が異なることを利用して、同額の現金や上場株式を保有しているよりも相続税の圧縮が期待されます。
(TSON FUNDINGの公式サイトより引用、下1枚も同じく)
任意組合型不動産投資型クラウドファンディングを良く募集している、代表的な営業者と言えば「TSON FUNDING」。
公式サイトの説明によると、同社の「スマートファンドSONAE」は最大で70%の節税効果があるとのことです。
節税にクラウドファンディングを使う問題点
このように任意組合型には節税効果があり、また所得区分が不動産投資となるため、人によっては匿名組合よりも有利となるケースがあります。
ただ任意組合型の不動産投資型クラウドファンディングを、「節税を主目的として」利用することには問題もあります。
一つには、現在募集されている任意組合型の不動産投資型クラウドファンディングは数年程度の運用期間が設定されており、相続の発生するタイミングに合うかどうかが読めないこと。
ただしこれは、今後何らかの方法で改善される可能性があります(例えばいくつかの不動産をバルク化した上、1年自動更新型の案件とするとか)。
もう一つの問題は、不動産小口化投資を利用した節税スキームに対し国税当局が目を付けていることです。
今後税制のルールが変わらないという保証はどこにもありません。逆に言えば、どのように変わっても対応できる準備と心構えが必要になるでしょう。
本来の形としての任意組合
最後にまとめです。
節税を主目的としない「本来の形としての任意組合」というものを考えると、それは「事業者リスクと切り離された、本来の姿の不動産投資」という形に落ち着くと思います。
匿名組合は不動産に投資するわけではなく、あくまでも不動産に投資する会社に出資します。そのため出資先の事業者リスクから逃れることはできません。
今の不動産投資型クラウドファンディングは大部分が匿名組合型ですが、この場合劣後出資部分が事業者持ち出しになるため、事業規模を拡大するためのネックになるという問題もあります。
今のところは新たな営業者も続々と登場していますので、大きな問題にはならないかもしれませんが、クラウドファンディングが小口不動産投資における一つの選択肢として定着するためには、任意組合との棲み分けが大事になってくるかもしれない、などと考えています。